『イノセント・デイズ』幸乃の幸せとは・・・

ノセント・デイズ_表紙 感想・あらすじ・解説

感想

「イノセント・デイズ」を読んで400字詰め原稿用紙5枚に感想をまとめました。ネタバレ含みます。ご注意下さい。感想を読んで共感いただけたら嬉しいです。

あらすじ

前文

9月15日東京拘置所で田中幸乃は死刑執行のため出房を命じられる。死刑判決から6年。幸乃は『僕だけは信じてるから。僕には君が必要なんだ』という言葉を思い出しながら執行室と向かう。

プロローグ

裁判の傍聴が趣味の私は、就職先からの内定を受け久々に裁判の傍聴をすることにする。メディアを騒がせていた放火事件だ。傍聴の下準備のためネットニュースを整理する。

3月30日母親と双子の姉妹の3人の命が亡くなった。犯人は父親の元恋人田中幸乃。

傍聴した裁判は、予想通りの判決となった、死刑判決の慣例通り判決理由は先に述べられる
「覚悟のない十七歳の母のもと-」
「養父からの暴力にさらされて-」
「中学時代には強盗致傷事件-」
「罪なき過去の交際相手を-」
「その計画性と深い殺意を考えれば-」
「反省の様子はほとんど見られず-」
「証拠の信頼性は極めて高く-」
「死刑に処する-」

そして死刑が確定する。

第1章 覚悟のない十七歳の母のもと-

田中ヒカルは、中絶のため丹下産婦人科訪れれる。当時自身の気持ちが堕胎手術を受け入れられなくなっていた丹下建生はヒカルを帰してします。他の病院で堕胎手術をしたものと思っていたヒカルが大きなお腹を抱えて出産をしたいと再び建生のもとを訪れ、女の子を出産する。幸乃誕生である。

第2章 養父からの暴力にさらされて-

腹違いの姉陽子と父、そしてヒカルと幸せに暮らしていた幸乃が7歳になったころ、状況が変化していく。ヒカルの過去の噂が近所に周り出し少しずつ孤立し始める。そんな中母が交通事故で亡くなってしまう。父は自暴自棄となり、幸乃はヒカルの母(美智子)に引き取られることになる。

第3章 中学時代には強盗致傷事件-

おとなしく目立たないよう過ごしてきた幸乃は小曽根理子と友達になる。理子と一緒に出掛けたある日、古書店で事件が起きる。理子が店員の老婆に怪我を負わせるが、その罪を幸乃が被ることになってしまう。

第4章 罪なき過去の交際相手を-

強盗致傷事件の罪を負った幸乃は児童自立支援施設を出て、井上敬介と出会っていた。中学、児童自立支援施設を経て他の人から心を閉ざしてきた幸乃の心をこじ開けてくれた人物である。同じく敬介に心をこじ開けられた八田聡とも出会う。敬介の幸乃に対する扱いはひどいものであったが、幸乃取っては自身が必要とされていると感じるときでもあったが、そんな敬介から別れ話が持ちだされ、拒み続けた幸乃であったが、敬介が姿をくらませる形で捨てられてしまう。

第5章 その計画性と深い殺意を考えれば-

敬介がいなくなり諦めかけたある日、敬介と付き合っていた時に貸したお金が毎月振り込まれている通帳の記帳をし、入金元を確認するとそこには銀行名と支店名が記されていた。

第6章 反省の様子はほとんど見られず-

裁判の後、幸乃の控訴をそして執行の先伸ばしのため幼馴染の丹下翔が動きだします。一時期は祖父の丹下建生と同じ産婦人科医を目指していましたが、父広志と同じ弁護士になっていました。

第7章 証拠の信頼性は極めて高く-

もう一人の幼馴染佐々木慎一も幸乃のことを心配していました。慎一は最初から幸乃を信じ、そして事件の真相を突きとめます。

エピローグ 死刑に処する-

最後死刑執行当日、冒頭裁判の傍聴を趣味にしていた私:佐渡山瞳が幸乃のために動きます。そして幸乃の最期を見届けることになります。

まとめ

この物語の主人公田中幸乃の様子が、関わったそれぞれに人の目線で語られ進んでいきます。幸乃自身の心情や思いが表現されるのは最初の前文と第5章のみです。幸乃にとって生きることとはどういうことなのか、それは佐々木慎一へ宛てた手紙を読んで慎一自身が彼女の手紙には生きることを放棄する内容が切々と綴られているにも関わらず、逆に生きることの執着を感じると表現している部分に現れている様に思います。そして棺の中の幸乃をみた佐渡山瞳が「おめでとう」と心で思ったことが幸乃は幸せになれたのだと思えてなりません。

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